源泉徴収票と支払調書とは

印税や原稿料を支払った場合、著者に発行する税務書類を源泉徴収票と勘違いされている方が結構多いですが、印税や原稿料など、給与所得でない支払いに対して発行する書類は支払調書、正確には「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」で、源泉徴収票ではありません。

源泉徴収票は、雇用関係にある人に対して給与を支払い、給与所得分からの源泉徴収を行った場合に渡すものです。

支払調書がどのようなものであるかは、詳しくは国税庁のサイトを参照してください。支払調書の用紙そのものは、最寄の税務署に行けばもらえます。

支払調書の税務署への提出

支払調書は、印税や原稿料を支払った翌年の1月いっぱいを目処に、税務署に提出します。印税や原稿料からの源泉徴収分の所得税を納付した場合はもちろん、海外在住者への支払いなどで、源泉徴収の必要がない場合にも、税務署に対しては支払調書の提出を行います。

支払調書の執筆者への送付

執筆者が日本国内在住者など、印税や原稿料から源泉徴収を行った場合にのみ、本人宛に印税や原稿料を支払った翌年の1月いっぱいを目処に、支払調書を一部送付します。執筆者はこの支払調書を確定申告のときに使用します。

海外居住者あるいは海外の企業が原稿を買い取る場合

海外に在住する非居住者あるいは海外の企業が日本国内の法人・個人から原稿を買い取る場合には、源泉徴収の必要も、消費税を加えて支払う必要もありません。海外からの支払いは、消費税の対象外となりますし、海外在住者は源泉徴収の義務も負わないからです。

ただし、海外在住者同士が原稿の売り買いを行う場合には、滞在国の法に従って取引を行う必要がありますので、必要に応じてお調べください。

日本国内の買い手が海外の法人に原稿使用料を支払う場合

海外の法人に対して支払いを行う場合には、消費税の支払い義務は生じません。原稿料額のみを支払えば大丈夫です。

ただし、海外法人に支払う場合には、どちらの通貨で決済するかをあらかじめ決めておく必要があります。例えばアメリカの企業とやり取りをするのであれば、原稿料の金額を円で決めるか米ドルで決めるかについて、あらかじめ合意しておく必要があります。

日本国内の買い手が海外の個人に原稿料を支払う場合

海外在住の個人に対して原稿料を支払う場合には、まず、その個人が税法上の「居住者」に該当するか、あるいは「非居住者」に該当するかを知る必要があります。

非居住者は海外に1年以上滞在している人、あるいは1年以上滞在する予定で出国している人などのことを言います。したがって、半年の予定で留学している人などは非居住者には該当しません。逆に日本の公務員などは、海外にいても居住者扱いとなりますから注意が必要です。

非居住者であるかどうかは住民票の有無とは関係なく、実際に日本国内に居所があるか、あるいは実際に海外にいるかどうかが判断基準となります。日本国内に住民票を残したままであっても、1年以上海外に滞在している人ならば非居住者です。判定については国税庁のサイトを参照してください。

居住者と判定される人に対する支払いは、日本国内の個人に対する支払いとなりますから、上記を参照してください。

一方非居住者と判定される人に対する支払いは、居住者と違い、10%の所得税源泉徴収を行う必要はなく、原稿料は満額支払うことになります。また消費税も対象外となり、かかりません。

非居住者への支払いに関する支払調書は本人には渡す必要はありませんが、翌年1月31日までに税務署に提出する必要があります。詳しくは国税庁のサイトを参照してください。

日本国内の買い手が日本国内の個人に原稿料を支払う場合

まず注意が必要なのは消費税の扱いです。原稿料などを支払う場合には、消費税を加算して支払わなければなりません。これは個人に支払う場合でも同様、常に消費税はかかると考えてください。

国内在住の個人に対して原稿料を支払う場合には、1回の支払額が100万円以下の場合、原稿料の10%をあらかじめ源泉徴収してから支払う必要があります。源泉徴収の対象となるのは、消費税額が明示されていない場合は消費税を含めた全額が、消費税が明示されている場合には消費税を除いた額が対象となります。

一般的には原稿料に消費税額が明示されることは稀ですから、総額を使って源泉徴収額を計算することになります。

例えば消費税込みの原稿料が1万円である場合、その10%の千円をあらかじめ所得税の源泉徴収分として天引きし、9千円を支払います。千円は預かった所得税ですから、支払う側が個人であっても、税務署に申告して納税する必要があります。納税しないと着服したことになります。

1回の支払が100万円を超える場合は、100万円に関しては10%の10万円、100万円を超える部分には20%の源泉徴収となります。ただし、分割して1回の支払いを100万円以下に抑えれば、常に10%の税率です。

源泉徴収して預かった所得税は、原稿料を支払った翌月に納付する必要があります。企業などで、預かった所得税の納付を半年に一度にしているところでも、原稿料からの源泉徴収は、毎月行わなければなりません。結構面倒です。

さらに原稿の書き手に対しては、原稿料を支払った翌年1月中を目処に、支払い金額と源泉徴収税額を明記した「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」(以下、支払調書)を送付する必要があります。またこの支払調書は、原稿の買い手が翌年1月31日までに税務署に提出する必要があります。詳しくは国税庁のサイトを参照してください。支払調書は、給与所得などが発生する時に用いる源泉徴収票とは違います。

支払調書には原稿料を受け取る方の住所・氏名を明記する必要がありますので、匿名での原稿のやり取りはできません。

原稿料の支払いと税務

原稿を買い取る場合、原稿の作者(販売者)が個人であるか法人であるか、さらにまた居住地が日本国内であるか海外であるか、などによってその税法上の扱いが異なりますのでご注意ください。

基本的には、個人からの買取の場合の所得税の源泉徴収と、それにともなく税金の納付、そして支払調書の発行が注意点です。

印税や原稿料の税金、源泉徴収、確定申告

印税や原稿料の税金はどうなるのか?多くの場合、出版社からあらかじめ印税や原稿料から源泉徴収分として10%が差し引かれて支払われます。(1回の原稿料支払が100万円以下の場合は10%、100万円を超える部分は20%が源泉徴収。)

申告の時期までに、出版社から納税したことを示す支払調書(源泉徴収票とは違う伝票のようなもの)が送られてきます。これを集計して、印税や原稿料収入がいくらあるか、税金としてあらかじめ引かれたものがいくらあるかを計算して、確定申告の時に用います。

確定申告では、印税や原稿料収入は、別に給与所得がある人なら雑所得として他の収入と通算します。印税や原稿料収入が主な収入源で、ある程度まとまった額の収入があると、税務署の方で事業収入とみなされてしまうこともあります。「これで飯を食おう」と思う人は、事業にするつもりで考えた方が良いかと思います。

もちろん、源泉徴収をされている分に関しては、申告の必要はありません。またこの雑所得、合計20万円以下なら給与生活者は申告しなくても良いことになっています。

では面倒だから確定申告せずに置くか?ちょっと待ってください。

多くの場合源泉徴収で税金10%は既に引かれています。あなたは所得税として10%以上払う必要がありますか?もし必要がなければ、20万円以下でも、確定申告した方がひょっとすると、源泉徴収分としてあらかじめ納税した10%のうちいくらかが戻ってくる可能性もあります。

また給与生活者でなく、100万円とかの印税、原稿料収入があるのならば、10万円源泉徴収として取られているわけですが、確定申告すると返ってくる可能性が大です。もちろん既に高額所得者である場合には、源泉徴収でおしまいにしておいた方がよいこともありますので、そのあたりは計算してください。