電子書籍ではなく、紙の自費出版本を作る夢は多くの人が持っています。紙の本ができると、感慨は電子書籍の比ではありません。そこに形になったものが存在するわけですから。 そして自費出版本を作ったら、流通させたいと思うのは自然なこと。
大手の出版社では書店流通にのせる自費出版のオプションも用意されていますが、手数料など結構高く付きます。例えば新潮社の自費出版(こちらで確認)。1,850,000円からとなっています。通常手が出る価格ではないですね。
書店流通はしなくても良いので、自費出版本をアマゾンで販売できないか、と考えて調べてみました。書店流通はどっちみち注文があるとは思えないので、考えに入れません。
結論から言えば、書店流通していない自費出版の書籍をアマゾンで販売することは可能です。ただし、ISBN番号の取得は必須で、ISBN番号のない書籍はアマゾンでは販売できません。ISBN番号は日本図書コード管理センターで誰でも取得が可能です。では本の印刷製本はどこで?意外に近くの印刷会社でもやってくれますよ。不安な場合は、自費出版に特化した会社もありますから、検索して見てください。本の原稿はMS Wordでも大丈夫。プロ用の編集ソフトは必要ありません。
以下は、自費出版の本にISBN番号を取得している、という前提で書いています。またAmazon e託販売サービスを利用する場合は、書籍にISBN番号がバーコードとして印刷されている必要があります。 アマゾンで販売するオプションとしては3つあります。1)アマゾン出品(出店)サービスの大口出品、2)アマゾン出品(出店)サービスの小口出品、そして3)Amazon e託販売サービス、です。1)2)は通常マーケットプレイスと呼ばれているサービスです。
1)アマゾン出品(出店)サービスの大口出品
アマゾン出品(出店)サービスの大口出品は月間登録料が4,900円かかるサービスです。一方で、本が売れた時の基本成約料はかかりません。販売手数料は一冊につき、販売価格の10%、そしてカテゴリー成約料が60円かかります。売れた本は自分で購入者へ送付する必要があります。
2)アマゾン出品(出店)サービスの小口出品
アマゾン出品(出店)サービスの小口出品は月間登録料は無料です。一方で本が売れた時の基本成約料が一冊につき100円、販売手数料は一冊につき、販売価格の10%、そしてカテゴリー成約料が60円かかります。つまり、自費出版本が月間に50冊以上売れる見込みがあるのであれば、Amazon大口出品の方が得、ということになります。売れた本は自分で購入者へ送付する必要があります。 さらに、小口出品の場合はアマゾンで販売していない書籍、つまりアマゾンのデータベースにない書籍の販売ができません。
一般的には、書店流通がない書籍の場合にはこのオプションは使えないように思えますが、次に紹介するAmazon e託販売サービスを使えば、自分の自費出版した書籍のISBNをアマゾンに登録することができます。
でもそれであれば、Amazon e託販売サービスを自費出版本の販売ルートとして使えば良いわけで、私は何かの理由で表紙に折れができたような本を中古本として小口出品で出しているだけです。
3)Amazon e託販売サービス
これが自費出版した本をアマゾンで販売する一番おすすめの手段です。私も自費出版本を販売するのにこの手段を使っています。
Amazon e託販売サービスは、アマゾン配送センターに在庫を委託し、商品販売、配送及びサポートをアマゾンが担当するサービスです。Amazon e託販売サービスの年会費は9,000円で、年ごとの更新です。手数料は販売価格の4割です。
Amazon e託販売サービスの場合、購入者に直接本を送るのではなく、アマゾンの倉庫へ商品の本を納入しなければいけませんが、その場合の送料は出品者の負担となります。
Amazon e託販売サービスの大きな利点の一つは、アマゾンが自動的に販売手続きや発送を行ってくれることに加え、商品ページに「在庫あり」表示が出ることです。つまり、潜在的な購入者に、すぐに手に入ることを知らせることができる仕組みです。
自費出版本の場合、印税方式での出版と違い、本の出版費用はすべて著者や出版人が負担し、既に支払われています。出版部数も、せいぜいが数百部と少ないのが通常です。出版部数が少ないですから、月に50冊以上売る、ということはあまり想定されないと思いますから、1)アマゾン出品(出店)サービスの大口出品は、オプションとしては除外されると思います。 あとは、2)アマゾン出品(出店)サービスの小口出品、そして3)Amazon e託販売サービスのどちらかを、「いかにコストをかけずに販売するか」か、「いかに手間をかけずに売るか」のどちらかで販売方法を選択するように思えますが…
Amazon e託販売サービスは、まとめてアマゾンに書籍を送っておけば楽なような気もしますが、在庫数はアマゾンに決定権があり、「100冊まとめて送っておこう」ということはできません。あまり売れない本であれば数冊ずつしか納入が認められず、その場合、購入者へ個々に本を送るのと、手間は大差なくなってしまいます。
次に利益の比較ですが、仮に本の定価を2000円とすると、Amazon e託販売サービスで手元に残るのは1200円。ここから年会費とアマゾンへの送料を負担することになります。一方で、アマゾン出品(出店)サービスの小口出品の場合は、手数料を支払った後に残るのは1640円。ここから購入者への送料を負担します。アマゾン出品(出店)サービスの場合は、送料を購入者負担として別途設定できるかもしれませんが、あまり勧められません。
結局、現実的な選択としては、Amazon e託販売サービスを利用して自費出版本のISBNをアマゾンに登録し、アマゾン出品(出店)サービスの小口出品を併用して様子を見る、ということでしょうか。
もう一つの注意点は、マーケットプレイスの場合、新品の本を売ることができない点です。「新品同様」は可能ですが、自費出版の新品の本を「新品」として出品できないのは、ちょっと気分が悪いですね。