経費も申告してしまえ

また申告することの利点として、経費も申告できる点があります。

例えば本を書くために資料を購入した、文具を購入した、コンピュータやソフトを購入した、としましょう。これらは経費です。原稿料や印税の収入が100万円として、経費が30万円かかったとしましょう。これを確定申告のときにちゃんと申告すれば、課税所得は70万円になります。

給与所得者で、原稿料収入が20万円しかなかった場合でも、経費が10万円かかっていれば、課税所得額は10万円。源泉徴収で2万円、つまりは2割を払っていることになりますから、収入と経費を合わせて申告すれば、源泉徴収された分の還付を受けられる可能性は大になります。

事業規模でない、雑所得としての申告であれば、さほど経理もきちんとしておく必要はないし、帳簿も提出する必要はありません。税務監査を受けるようなこともまずありえません。例えちょっとごまかしていたとしても税務署員の日当の方が高くついてしまいますから。

というわけで、原稿を書くのにちょっとでも使ったものは経費にしてしまおう!

どっちみち買う予定だったコンピュータが必要経費で落とせるなんて、ちょっと得した気分じゃないですか。厳密に言えば、仕事に使用した時間分だけを申告するとかなるのでしょうけど、個人の僅かばかりの雑所得はそこまで調べられることはまずないでしょう。別に脱税を勧めるわけではありませんが。

印税や原稿料の税金、源泉徴収、確定申告

印税や原稿料の税金はどうなるのか?多くの場合、出版社からあらかじめ印税や原稿料から源泉徴収分として10%が差し引かれて支払われます。(1回の原稿料支払が100万円以下の場合は10%、100万円を超える部分は20%が源泉徴収。)

申告の時期までに、出版社から納税したことを示す支払調書(源泉徴収票とは違う伝票のようなもの)が送られてきます。これを集計して、印税や原稿料収入がいくらあるか、税金としてあらかじめ引かれたものがいくらあるかを計算して、確定申告の時に用います。

確定申告では、印税や原稿料収入は、別に給与所得がある人なら雑所得として他の収入と通算します。印税や原稿料収入が主な収入源で、ある程度まとまった額の収入があると、税務署の方で事業収入とみなされてしまうこともあります。「これで飯を食おう」と思う人は、事業にするつもりで考えた方が良いかと思います。

もちろん、源泉徴収をされている分に関しては、申告の必要はありません。またこの雑所得、合計20万円以下なら給与生活者は申告しなくても良いことになっています。

では面倒だから確定申告せずに置くか?ちょっと待ってください。

多くの場合源泉徴収で税金10%は既に引かれています。あなたは所得税として10%以上払う必要がありますか?もし必要がなければ、20万円以下でも、確定申告した方がひょっとすると、源泉徴収分としてあらかじめ納税した10%のうちいくらかが戻ってくる可能性もあります。

また給与生活者でなく、100万円とかの印税、原稿料収入があるのならば、10万円源泉徴収として取られているわけですが、確定申告すると返ってくる可能性が大です。もちろん既に高額所得者である場合には、源泉徴収でおしまいにしておいた方がよいこともありますので、そのあたりは計算してください。

自分の本を会場で売ってしまえ!

もうひとつ面白いなあ、と思ったのが、講演などの折に著書を持っていって売ると、結構売れるのです。多いときは50人の参加者のうち10人に買っていただけました。もちろん面白い話ができるかどうか、ということにもかかっているでしょうけれど。

こうしたときに持っていく本は、著者割り引き(通常2-3割引)で出版社から直接送ってもらったものですから、定価で販売すれば、印税よりも良い収入になります。と言っても、10冊売って3200円ですから、知れていますけどね。

10冊も本を持ち歩いたら大変ですよ。重いですから。相当数が出ると予想されるなら、宅配便を使いましょう。

それでもサインを求められたりするのは悪い気分ではありません。病み付きになるほど面の皮は厚くはありませんが。一度驚いたのは何か勘違いされたのか、本ではなくて紙にサインを求められた時でした。本当にファンだったのか?それとも誰だか知らないけど本にサインしているから有名人だと思われたのか。いずれにしろ当人はこっぱずかしく思ったのでした。

またどんな相手に話すかによって売れる本も違ってきます。一般大衆に話をするときには一般向けの本が、専門分野の人に話すときは専門書が売れます。当たり前のことではありますが。

書くだけでなく、講演もしてしまえ

さて本を数冊書いたり訳したりすると、それなりに人の前で話をする機会も増えます。講演を依頼されることもあり、また私の場合は専門書も書いていますから、大学などでレクチャーをしたり、セミナーに出席することを依頼されることもあります。

こうした機会は、時間当たりの単価にすると結構よい手当てがもらえたりもして、最高1時間話しただけで謝礼として5万円いただいたこともあります。これには驚きましたが。いや、これで驚いているようではだめなんでしょうね。

一方相当遠隔地まで行って一時間9千円とか、あるいは20ページの参考資料を用意させられたのに、支払われるのはしゃべる時間だけ、というひどい仕事もありましたが。

いずれにしろ、毎日そんな機会があるわけでもなし、確実な収入を約束してくれるようなものには私程度ではなりません。

それでもある年の原稿料と講演料の収入は300万円くらいになりました。家族を食わせるには厳しい額ですが、拘束時間はさほど長くないわけですから、時間単価で考えれば決して悪くはありません。

ちなみにこの年の確定申告に行ったら「300万稼いだならこれは雑収入ではなくて事業所得ですね」と言われてしまいました。胸を張るべきかどうか…事業所得には事業税がかかるのです。

講師になる参考書はこちら。

本が書けなければ売る側になろう

さて印税で私がいくら儲けたかというと、一番率の良い本で10%。この本の値段は1600円でしたから160円の収入。これだけ見ると決して悪い話ではないですが、問題はあまり買う人がいないこと。

私のような無名な人間の書く本は、とりあえず出版後1ヶ月くらいは書店に並んでも、すぐにあとから出てくる本に置き換えられてしまいます。そうなるともう誰の目にも触れずに出版社の倉庫で眠るだけ。いくら良い本であっても、ベストセラーにでもならない限りはこの道をたどります。

私の本は購入者にはそれなりに評判が良く、見ず知らずの人からもお褒めの言葉をいただき、アマゾンの書評でも星5つがついていますが、こんなものです。最初に書店に並んで、友人から「ここの書店にもあったぞ!」という報告を聞いた時にはとても嬉しかったのですが、1ヵ月後に補充されていないのを見るときの悲しみの方が大きかったです。

つまりよほどの売れっ子ライターでもない限りは、さほどの利益にはならない、ということです。スタートダッシュで爆発的に売れなければ、ほとんどの本はそれで終わりです。

では発想を変えて、自分の本にこだわらずに本を売ることによって利益を得られたら?それは可能です。自分の売れない本が売れることを期待するよりも、世に無数にある売れる本を売って利益を得るほうが賢いと言うもの。ここは自己満足を捨て、儲かる道を選ぶことにしましょう。

その方策は?アフィリエイトです。

例えばアマゾン。ここに登録するとアマゾンが売っている本の紹介をして手数料を得ることができます。その額は代金の約5%。どう考えても自分の本を1冊売るよりも同じ値段でベストセラーになっているものを2冊売る方が簡単です。アマゾンでアフィリエイトをする参考書はこちら。

もし印税を不労所得の道として考えるなら、悪いことは言いません。著者になるよりも売る側になる方が簡単です。「それでも本を出したい!」という方はぜひ頑張ってください。印税生活の夢は難しいですが、それでも自分の書いたものが本になるのは喜びです。

出版社からの執筆依頼

その次は書店の方から「こんな内容で書き下ろしの本を書いてみないか」というお誘いを受けましたが、それは上記の著書や訳本の実績に加えて、とあるメーリングリストでの発言を目にとめてのことだったと思います。

この出版社は私が学生の頃から慣れ親しんだ多くの専門書や教科書なども出しているところでしたので、自分がそこから本を出すことになった、ということに相当の感慨を覚えました。この時は2千部で、印税は4%、2千部全部の分を出版時に前払い、という契約です。

さらに次に共著書を企画して出しましたが、これもどちらかと言えば専門書、執筆陣の一人が関連する書籍を出している出版社に話を持ち込んだところ、興味をもたれてそこから出版することに。

複数の人との共著を出す、というのは、クオリティーの確保などの点で難しい面もありますが、出版社探しとか販売の面では有利になりますからお勧めです。

他にも翻訳書を出していますし、一冊監修している本もあります。これらはどちらも以前出したことがある書店からです。

こう書くと順調なようにも思えますが、実は2冊目を出した書店から再度依頼があって、一冊分の原稿を書いたものの、気に入っていただけなくて、出版されなかったこともあります。その原稿は仕方がないのでWEBに掲載していますが、もちろん一銭にもならなかったわけです。

出版社への持ち込み原稿

自分の本を出そうというときに難しいのが出版社選び。いや、出版社のほうが選ぶのかもしれませんが。原稿を持ち込んでも断られた、という話も良く聞きますし、私の知人には良くて印税なし、あるいは一部自己負担での出版を勧められた人もいます。

これ、つまりは出版社の方で「この本はあまり売れん」とよんでいるわけです。要は金を出してまで買う原稿ではない、ということですね。それでも出版してもらえる、というのなら「万が一」ということはあるレベル、なのでしょう。

私の場合どうしたか、というと、最初に出した単行本は仕事関係の本を出したことのある義理の妹が、出版社に私の原稿(このときはまだ本の体裁になっていなかった)を持ち込み、それが目にとまって出版する運びとなりました。タンザニアの話を書いた本です。

このときは出版社が気に入ってくれて、あれよあれよと言う間に話が進み、良いデザイナーさんを付けてくれたり、初の出版としては異例の5千部も刷ってくれたり、いきなり10%の印税をくれたりと、とてもラッキーでした。結果としては出版から何年もたつのに半分近くが在庫のまま、というのが申し訳ないところです。

次に出したのはイギリス人の書いた本の翻訳本ですが、同じ著者の訳本を以前出したことがある出版社に連絡したら「ぜひ出したい」ということで決まり。これは著者自身が印税を放棄している本でもあり、翻訳料もなしで出しました。無論経費的には持ち出しですが、評価が高い(とは言っても専門書なので普通の人には縁がありませんが)本を訳した、というのは、私の実績になるわけです。

ベストセラー作家以外は印税では暮らせません

つまり、よほどのベストセラー・ロングセラーを続けて出せる人しか、印税では暮らせない、ということです。私などは著書があるだけで「印税で儲けている」なんていう目で見られて迷惑することの方が多いくらいです。

本一冊を書き上げる労力を考えると、私程度、要するにせいぜいが数千部しか売れない本の書き手では、原稿を書く労力の元すら取り返せません。

「印税で暮らす」という類の本を紹介しておきます。信じる信じないはもちろん皆さん次第。私にはこれらの本の著者たちが印税で暮らしているとは到底思えませんが。

本の印税はいくら?

本の印税はいくらくらいだと思われますか?印税の率だと人によって違うものの、一般的には本の販売価格の4-10%くらいです。でもここで問いたいのは、「金額としての本の印税はいくら?」という点です。

印税生活は、可能性だけの話なら、「可能である」となりますが、まず計算してみてください。仮にあなたが「売れる」と思われる本を書いたとしましょう。印税を最高の10%とします。年に生活に必要な額は、もちろん個人差もありますが、多少はゆとりを含めて年額400万円としておきましょうか。

さて400万円を印税で稼ぐには、本の売上はいくら必要か?税を考えなければ4千万円です。4千万円売り上げるには本を何冊売ればよいか?仮に私の本の定価1600円を使うとすると、25000冊。もちろん生活ですから、これを毎年コンスタントに続けなければなりません。10年だとして25万冊。

そんなに続けて売れる本をあなたは果たして書けるでしょうか?年間これだけ売れている人が、それも続けて売れている人がどれくらいいるでしょうか?

私の単行本は1冊目の印刷部数が5千部でした。これでも例外的に多い、と言われていました。案の定今でも在庫の山です。印税が10%ですから1600円の本が半分売れて、40万円。何年もかかってこの額です。

2冊目は別の出版社ですが2千部。これは印税4%ですから、全部売れても、手にする印税の総額は、144000円にしかなりません。年収どころか、一ヶ月の生活費にも満たない額です。これが多くの「著者」たちが直面している現実です。

共著書・共訳書の印税収入

共著書・共訳書の場合には著者・訳者が多いと原稿料・翻訳料の一時払いになるケースが多いようですが、人数が少ないと印税形式になる場合もあります。私も共訳した本の翻訳料を印税形式、つまりは売上に基づく形で受け取っているものがあります。この場合は翻訳料は本の価格の5%、これを訳者で分配する、という形になっています。監訳者の取り分が多めに設定され、他の訳者が残りをページ数などによって按分というのが一般的なようです。

私の場合だと翻訳者が受け取る5%の内の20%くらいを受け取りますから全体の1%。2千円の本が2千部売れてやっと4万円です。専門書ですから初版2千部が売切れるまでに数年かかることでしょう。これまた大ベストセラーでない限りは大きな利益にはなりえないわけです。