日本国内の買い手が海外の個人に原稿料を支払う場合

海外在住の個人に対して原稿料を支払う場合には、まず、その個人が税法上の「居住者」に該当するか、あるいは「非居住者」に該当するかを知る必要があります。

非居住者は海外に1年以上滞在している人、あるいは1年以上滞在する予定で出国している人などのことを言います。したがって、半年の予定で留学している人などは非居住者には該当しません。逆に日本の公務員などは、海外にいても居住者扱いとなりますから注意が必要です。

非居住者であるかどうかは住民票の有無とは関係なく、実際に日本国内に居所があるか、あるいは実際に海外にいるかどうかが判断基準となります。日本国内に住民票を残したままであっても、1年以上海外に滞在している人ならば非居住者です。判定については国税庁のサイトを参照してください。

居住者と判定される人に対する支払いは、日本国内の個人に対する支払いとなりますから、上記を参照してください。

一方非居住者と判定される人に対する支払いは、居住者と違い、10%の所得税源泉徴収を行う必要はなく、原稿料は満額支払うことになります。また消費税も対象外となり、かかりません。

非居住者への支払いに関する支払調書は本人には渡す必要はありませんが、翌年1月31日までに税務署に提出する必要があります。詳しくは国税庁のサイトを参照してください。

日本国内の買い手が日本国内の個人に原稿料を支払う場合

まず注意が必要なのは消費税の扱いです。原稿料などを支払う場合には、消費税を加算して支払わなければなりません。これは個人に支払う場合でも同様、常に消費税はかかると考えてください。

国内在住の個人に対して原稿料を支払う場合には、1回の支払額が100万円以下の場合、原稿料の10%をあらかじめ源泉徴収してから支払う必要があります。源泉徴収の対象となるのは、消費税額が明示されていない場合は消費税を含めた全額が、消費税が明示されている場合には消費税を除いた額が対象となります。

一般的には原稿料に消費税額が明示されることは稀ですから、総額を使って源泉徴収額を計算することになります。

例えば消費税込みの原稿料が1万円である場合、その10%の千円をあらかじめ所得税の源泉徴収分として天引きし、9千円を支払います。千円は預かった所得税ですから、支払う側が個人であっても、税務署に申告して納税する必要があります。納税しないと着服したことになります。

1回の支払が100万円を超える場合は、100万円に関しては10%の10万円、100万円を超える部分には20%の源泉徴収となります。ただし、分割して1回の支払いを100万円以下に抑えれば、常に10%の税率です。

源泉徴収して預かった所得税は、原稿料を支払った翌月に納付する必要があります。企業などで、預かった所得税の納付を半年に一度にしているところでも、原稿料からの源泉徴収は、毎月行わなければなりません。結構面倒です。

さらに原稿の書き手に対しては、原稿料を支払った翌年1月中を目処に、支払い金額と源泉徴収税額を明記した「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」(以下、支払調書)を送付する必要があります。またこの支払調書は、原稿の買い手が翌年1月31日までに税務署に提出する必要があります。詳しくは国税庁のサイトを参照してください。支払調書は、給与所得などが発生する時に用いる源泉徴収票とは違います。

支払調書には原稿料を受け取る方の住所・氏名を明記する必要がありますので、匿名での原稿のやり取りはできません。

原稿料の支払いと税務

原稿を買い取る場合、原稿の作者(販売者)が個人であるか法人であるか、さらにまた居住地が日本国内であるか海外であるか、などによってその税法上の扱いが異なりますのでご注意ください。

基本的には、個人からの買取の場合の所得税の源泉徴収と、それにともなく税金の納付、そして支払調書の発行が注意点です。

あらかじめ権利の範囲を合意しておこう

原稿を買い取る場合、あるいは執筆依頼を行う場合には、執筆者の権利の範囲についてあらかじめ合意しておく必要があります。それがなされないと、気づかない内に執筆者の権利を侵害したり、逆に執筆者が原稿購入者の権利を侵したりといった、問題が生じることになります。以下がチェックリストです。

原稿の利用の独占性は確保されているか
一般的には、原稿を買い取る側に原稿の独占的な利用を認める契約にしておきます。執筆者は同じ原稿を二重に販売したりができなくなります。

原稿の改変は許可されているか
買い取った側で原稿に手を入れて発表することがある点を、あらかじめ合意しておきます。特にWEBなどで情報として掲載する場合には、内容の更新が必要となる場合が多いため必須です。

原稿に付随する写真やイラストなどの利用権は合意されているか
原稿に挿入される写真やイラストなどは、特にWEB上では別ファイルとして存在しますから、容易に複製が可能です。著作権者自身による利用や、他者による二次的な利用に関しても、原稿とは別に合意しておく方が良いと思います。

原稿の翻訳権は認められているか
外国語にも翻訳したい場合には、原稿の利用権の中にあらかじめ翻訳権にも言及して合意しておくことが良いと思います。

翻訳権

原稿を外国語に翻訳すると、翻訳された著作の権利はどうなるでしょうか?翻訳者にもオリジナリティが求められますから、翻訳者にも権利が発生しそうですね。事実翻訳物にも著作権が発生します。

実際には、元の原稿の著作権に付随する権利として、翻訳権というものが存在します。つまり、著作権者の承諾を得ずに、原稿を翻訳して発表することはできない、ということです。

もし原稿を翻訳して利益を得ようというような場合には、著作者とあらかじめ利益配分などに合意した上で、翻訳権を得る必要があります。

原稿利用の独占性

書き手は買い手に対して売買の対象となる著作物の利用権を、独占的に提供するのかどうかを決める必要があります。独占的な利用権を認める場合には、書き手と言えども同じ著作物を自ら公表したり、あるいは他者に再度販売・譲渡したりはできません。一般的に現行の買取、あるいは原稿料を支払って執筆を依頼するような場合には、このような独占的な利用権を前提としていることが多いと思います。

「原稿は譲渡するが、写真は自分のサイトでも利用したい」というような場合には、原稿に関する権利と、写真に関する権利を別個に設定し、あらかじめ合意してください。

原稿の著作権・利用権

書き手によって創作された原稿(写真やイラストを含む)の著作権は自動的に書き手に属するものとされており、著作権自体は譲渡ができません。

したがって、実際に売買の対象となるのは著作物を利用する権利です。

当サイトでは、書き手の著作物を買い手のWEBサイトなどに掲載し、公表する権利のやり取りを念頭においていますが、それに付随して特に以下の点について書き手と買い手との間であらかじめ合意しておく必要があります。

著作物が原稿のみではなく、イラストや写真などを伴う場合には、場合によってはそれぞれに関して個別に権利の範囲を決めておく必要があります。

まめに投稿

私の場合、一般紙への投稿というのはほとんどしたことがないですが、専門分野の雑誌などには時々寄稿して採用してもらっています。

そうしていると、誌面に穴があるときなどに「書いてくれませんか?」という依頼が来たり。そんな時のためには普段からちょこちょこ書き溜めていると便利ですね。

例えば書評とか。専門書の書評を書きとめておいて専門誌に送ります。そうすると誌面に穴が開いている時などに、結構掲載してもらえたりするのです。我ながらせこいですねえ。

そんなことをしているうちに単行本ではありませんが、原稿の依頼もちょこちょこ来るようになることでしょう。専門誌ではない雑誌の書評欄を頼まれたこともありますし。私が一度も買ったことのない社会派の有名雑誌でした。でも2度目の依頼は来ませんでしたが…。

それ以外には専門書の共著書の一部の原稿を依頼されたり。こうしたものはすべて原稿料をいただいて清算ですが、既に書いたように下手に売れない本で印税をもらうよりは、費用対効果はこの方が高いのです。

仮に原稿料が2万円にしかならないとしても、4%の印税しかもらえない1800円の本なら、約280冊分です。原稿料を馬鹿にしてはいけません。原稿を依頼されるくらいの実力を身につけましょう。

また私は専門分野の月刊雑誌に連載を頼まれたことがあります。1年半くらいでしたか。金額的にはさほど多くはなく、1回に税金を引かれて手元に残るのは2万円くらいでしたが、もしもっと売れ筋の雑誌で原稿料が高いところに、かつ複数連載が持てるようになれば、何とか暮らしていける程度の収入は確保できるかも。

でも繰り返しますが、ライターは不労所得者ではありません。時間と労働の切り売りです。

単行本はステップ、ライターをめざそう

一度だけ、原稿料をもらって単行本(教科書のようなもの)を書いたことがあります。この時は原稿用紙一枚いくら、という値段の設定になっていましたが、1冊分で70万円くらいの収入になりました。私がもらった印税は、最高でも年に20万円台ですから、大きな違いです。本の売れ行きに関わらず貰えますしね。

というわけで、普通の人は印税収入を目指すよりも、原稿料を稼げるようになる方が利益にはなると思います。ただし、原稿料を稼げるようになるための実績として、単行本を出していることはポイントになりますから、投資のつもりで単行本に挑戦するのは悪くないと思います。

つまり「印税生活」ではなくて「原稿料生活」ですね。印税で暮らすのが作家だとしたら、原稿料で暮らすライターを目指すわけです。こちらの方が可能性としては高いと思います。「不労所得で暮らす」というわけには行きませんが…。

印税生活、と銘打っているお話のはずですが、可能性としては本の出版はライターとしての実績作りのため、と割り切り、原稿を狙う方が可能性は高い、と思います。